てつがくのライオン
ライオン「こ、こんにちは」
縞馬「やあ、こんにちは、ライオン」
ライオン「えーと・・・あのォ夕焼け、美しいね」
縞馬「うん、とても美しい。ここから見るのが、いちばん美しいんだよ」
ライオン「あのう・・・・・・きみ、夕焼けの話やなんか、好きかい?」
縞馬「好きともさ。花の話なんかもね」
ライオン「ね、なんでひとりぼっちなんだい?」
縞馬「うん。何ていうか・・・好きなんだ。ひとりぼっちが。・・・・・それより、きみこそ、なんでひとりぼっちなの」
ライオン「!ウァオ きいてくれよなあ縞馬!」
・・・・・
縞馬「ふうん。寂しかったんだね、ライオン」
ライオン「ああ。寂しかった。・・・長かったんだ。ひとりぼっちが、とても長かったんだ」
縞馬「ふうん。長かったんか・・・。寂しかったろうね」
・・・
でももうさよならしなくちゃだめだよね
・・・
縞馬「あのねライオン、ぼくも、きみと同じさ。風の吹きぐあいや、かけっこのスタイルについて何日でも話し合える相手がほしかった。でも、みんな忙しがって相手にしてくれないのさ」
縞馬「な?だのにいま、きみと別れたらどうするのさ。きっと、きみみたいに寂しい目をした縞馬になるよ」
ライオン「ところで縞馬。君は俺のそばへきたとき、たべられちゃう、なんて思わなかった?」
縞馬「だってさ、涙ぐんだライオンが、縞馬をたべる、なんて思えないよ」
- 作者: 工藤直子,佐野洋子
- 出版社/メーカー: 理論社
- 発売日: 1982/07/01
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